ミケーネ美術について 2
浮彫りとはいえ、彫塑性、立体性を目差した作品です。
ここにまぎれもなく彫刻が彫刻である性質、すなわち彫塑性の確立を認めねばなりません。
それはクレタ作品にはないものでした。
なお構図にも注目したいものです。
低い三角形に均衡のとれた安定感とゆるみのない緊張とを備えた構図は見事に成功しています。
これと似た構図は印章にはみられるとしても、大きさは比較にもならないから、作者の創意といってもよいでしょう。
この堂々たる彫刻板であってこそ巨石からなる城壁と対抗し押えることができました。
頭部を失った今日でもなお獅子門はミケーネの遺跡のなかで最も強い印象をうけます。
ところで、この大作は青銅の道具によって制作されたのです。
作者はまず青銅の鋸と一種の穿孔器によって輪郭にそって穴をあけて大休を彫りだし、ついでのみで仕上げて磨きました。
鉄器がまだ知られぬ時代に素朴な道具を使ってこの雄大な作をつくりあげたその腕は並々ならぬものです。
このミケネ時代最大の彫刻は彫刻として記念碑的だといえるでしょう。