ミケーネ美術について 3
作品の迫力はさきの黄金のマスクのそれと相通じるでしょう。
そこでもう一つ同類の迫力と彫塑力をしめす作品をあげましょう。
像の頭部であって実際の人間よりは少し小さいもの。
ストゥッコは広義の瀦蝋ですが、それに彩色して彫刻を補っています。
強烈な作品であって未熟さも欠陥も忘れさすほどですね。
頭頂部を欠いていますが赤いバンドを髪にまき、その下から巻毛が額にかかっています。
そのために狭くなった額には長く鋭い眉がひかれ、その下から眼尻のあがった大きな眼が瞳をすえて睨みます。
鼻は少し欠けています。
頬骨は出ばり赤い唇の口許はしまっています。
頬と顎の赤い斑点は化粧か入れ墨。
この顔は全体として角ばりまた十分に彫塑的です。
この像は女性であって、スフィンクスでしょうか。
女神かもしれませんが、いずれにせよこの強烈な生命力を放射する顔はクレタからは遠いものです。
ティリンス壁画の宮廷の女とも通じるものをもっています。
まさしくぎこちなさを越えて人朋存在の自己主張をしている作品です。
・・・このような、なまなましい自己主張はミケネ美術の一両です。
以上のほかには多くの作品が残るけれども、小品となるとクレタの作風をそのままに受けついでいて、クレタ製と思われるものも含まれています。